成功と失敗から見つけるブランド戦略
配信日:2025年1月22日
ブランディングの重要性は広く認識されています。しかし、ブランディングにおける「効果の見えにくさ」は、現場のマーケターや経営者にとって最大の課題と言えるでしょう。その背景には、「自社にとって効果的なブランディングとは何か」が十分に研究されていないという本質的な問題があります。
では、効果的なブランディングを理解し、成功に導くためには何が必要なのでしょうか。その鍵は、成功事例と失敗事例の両方を深く研究することにあります。具体例を挙げながら、説明しましょう。
成功事例:スターバックスのフラペチーノ
フラペチーノは、もはや「コーヒー」ではなく「デザートビバレッジ」としての位置づけで、コーヒービジネスの本流からは外れます。しかし集客力とブランドの鮮度を維持する上で大きな成功を収めています。若者層をターゲットにしたこの商品は、スターバックスが「コーヒー愛好家」だけでなく、「新しい体験を求める層」を取り込むことに成功した好例と言えるでしょう。
考察ポイント
製品がブランドの主軸から外れていても、新たな顧客層を獲得するための戦略として有効のようだ。特にサードプレイスというコンセプトを強化する点では祖業であるコーヒーにこだわり続けないほうがよいこともありそうだ。
失敗事例:スターバックスのTEAVANA
一方、同じスターバックスが別ブランドとして展開したTEAVANAは、多額の投資にもかかわらず、現時点ではまだ成功を収めていません。TEAVANAのブランド戦略は「ブランドレバレッジ」といわれるもので理論的には正攻法だったにもかかわらず、いくつかの要因によって期待された成果が得られなかったことを示しています。
考察ポイント
戦略コンセプトは良かったが、例えばドリップコーヒーやカプチーノに相当するようなベーシックアイテムがなく(わかりずらく)、製品価値が伝わりにくかったのではないか。またオペレーションが複雑で顧客を無駄に待たせることが多かったのではないか。なによりブランドの強みである「スターバックスらしさ」をオペレーションで活かせなかったのではないか。
このような失敗事例を分析することで、同様の課題に直面した際の貴重な教訓となります。
事例研究の意義
スターバックスのような一つの企業、しかもブランドカンパニーにも成功と失敗があります。ここが興味深いところです。私たちは2005年に出版した「THE BRAND BIBLE(水野与志朗著/総合法令出版)」のなかで「今、成功しているブランドの多くは偶然の産物である。彼らはブランディングの落とし穴を幸運にも回避した」と書いています。これは賛否両論あったのですが、公平に言って、成功と失敗の両面から学ぶことは、企業がブランディング戦略をより効果的に設計するための重要なプロセスです。歴史上、多くの戦略家が幾多の戦史や歴史から「現状を打ち破る戦略」を編み出したのと同じです。
個々の企業が精緻な研究を出来ないことが多いのも事実
ここで企業は現実的な問題に直面します。そのような手の込んだ研究なるものを行えない理由があります。
- リソースの限界:中小企業を中心に、十分な時間や人材を割くことが難しい。
- 専門知識の不足:成功と失敗の要因を的確に分析するスキルが不足している。
- 短期的成果へのプレッシャー:日々の業務に追われ、長期的な戦略構築や事例研究を行う余裕がない。
私たちの役割
これらの課題を解決するために、私たちのような専門ブランドコンサルティング会社が果たす役割は大きいと考えます。様々な業界での成功と失敗の事例を整理し、体系化してクライアントと共有することは、クライアントがより効果的なブランディングを実現するための第一歩です。
言葉を変えれば一つでも多くの事例研究をフラットな目で行うことが、効果的なブランディングの鍵になります。更には、これらを業種・業界で成功の傾向とコツを知ることも価値があると考えています。私たちは、そのようにして企業の成長を支え、「本当に効果のあるブランディング」を世の中に広めていきたいと考えています。