ポーカー型、囲碁型のブランド戦略

ポーカー型、囲碁型のブランド戦略

配信日:2025年10月22日

ブランドにも国家にも、戦略を考える時間感覚の「型」があります。短期的にインパクトを生む「ポーカー型」と、長期的に盤面を広げていく「囲碁型」。これは単なる比喩ですが、ブランド戦略を考えるうえで非常にわかりやすい視点です。企業がどの時間軸で戦っているかは、マーケティング施策、顧客接点の設計、さらには株価の推移にまで表れます。

ポーカー型と囲碁型とは何か

先日、日経新聞で印象的な記事を目にしました。米中対立の構図を「トランプはポーカー、習近平は囲碁」と表現していたのです。トランプ氏は高関税というカードを切り、短期的な交渉圧力で勝ちを狙う。一方の習近平氏は、レアアースや大豆輸入といった要所を少しずつ押さえ、時間をかけて盤面を広げていく。これはまさに「戦い方の違い」を端的に表した比喩です。

なぜ「ポーカー型」と「囲碁型」と呼ぶのか。それは戦略の時間軸と勝ち筋の違いにあります。ポーカーは短時間で勝敗が決まるゲーム。強いカードを持っているように見せ、瞬発力と駆け引きで勝負します。囲碁は逆に、盤面を広く読み、布石を積み重ねて優位を築いていくゲーム。つまり、ポーカー型は短期決戦型の戦術、囲碁型は長期戦略型の布石といえるのです。

この視点は、国家の外交だけでなく、企業のブランド戦略にも驚くほどよく当てはまります。ある企業は一気に話題をつくって市場を押さえようとし、ある企業は時間をかけてブランド基盤を築いていく。時間軸の型が戦い方を決めるのです。

型は移ろうもの

重要なのは、どちらの型が優れているかではなく、時代や状況によって型は移ろうということです。

国家ブランド、米国の覇権拡大を例にすれば、第二次世界大戦直後は、欧州の疲弊を背景にポーカー型的に一気に盤面を押さえました。その後、世界秩序を制度で固める囲碁型へと戦略をシフト。そして今また、トランプ政権のようにポーカー型へ揺り戻す兆しがある。

つまり、戦い方の型は固定ではなく、状況に応じて揺らぎ続けるものです。ブランドもまた、同じ構造の中で戦っています。

百貨店が示す「型のずれ」の怖さ

たとえば百貨店業界。かつては催事・広告・立地による短期的な集客(ポーカー型)で圧倒的な力を持っていました。しかしショッピングモールやECといった新しい業態が登場し、「百貨店で買う理由」が揺らいだとき、長期的な囲碁型の布石、つまり「体験価値」や「顧客との関係性の再設計」を打てなかった。

勝ち筋そのものが時代に合わなくなったとき、柔軟に型を移せなかったことが衰退の本質です。ポーカー型が悪かったのではなく、囲碁型へのシフトが遅れたのです。

企業が型を使い分けるとき

一方で、状況を読み、型を切り替えることで再成長を遂げた企業もあります。任天堂は性能競争(ポーカー型)から離れ、「Wii」「DS」で体験価値(囲碁型)を築きました。富士フイルムは写真ビジネス依存を脱し、医療・化粧品分野へと新しい布石を打ちました(囲碁型)。

いずれも、時代と市場の変化を見極め、「いまどちらの型で戦うべきか」を明確に判断した結果です。

いま、どちらの型で戦うべきか

ブランド戦略は、ポーカー型と囲碁型のどちらかを選ぶ話ではありません。

  • 短期でインパクトを生むポーカー型
  • 長期で基盤を築く囲碁型

この両輪を持ち、環境やフェーズに応じて使い分けることが本質です。型は確かに存在します。しかしそれは固定するものではなく、読み替えるためのレンズです。いま、自分たちのブランドはどちらの型に寄っているのか。そして、次の一手はどちらに打つべきなのか。
この問いこそが、ブランド戦略を本当に「生きた戦略」にする鍵になるのです。

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