
ブランドメッセージの「削ぎ落とし」の技術
配信日:2025年3月19日
企業のブランドメッセージを見ていると、煩雑で伝わりにくいものが多いと感じることがあります。ブランドの魅力を伝えようとするあまり、あれもこれもと詰め込みすぎたり、抽象的すぎたりして、何が言いたいのか分からなくなってしまうのです。
伝わらないブランドメッセージの典型例
ブランドメッセージが伝わらない原因には、大きく分けて3つのタイプがあります。
- 情報の詰め込みすぎ
- すべてを伝えようとして、結局何も伝わらなくなる。
- 抽象度が高すぎる
- ぼんやりしすぎて、消費者の記憶に残らない。
- ベネフィットが欠落している
- 企業の視点ばかりで、消費者が得られる価値が明確でない。
事例: H&MとZARAの比較

- H&Mのブランドメッセージ「To offer fashion and quality at the best price in a sustainable way.」
- 「ファッション」「品質」「価格」「サステナビリティ」と抽象度の高い言葉で複数の要素が詰め込まれており、一貫した印象が弱い。また、消費者が得られる具体的なメリットがはっきりしない。
- ZARAのブランドメッセージ「Timeless, effortless, always on trend.」
- シンプルでありながら、「さっと手に入る」「手間を取らせない」「常にトレンドを押さえている」という具体的なベネフィットが伝わる。消費者にとって「ZARAを選ぶ理由」が明確になっている。
このように、ブランドメッセージが長すぎたり、説明を詰め込みすぎたり、抽象的すぎたりすると、消費者の心にひっかからずにスルーされてしまいます。また、企業側の視点ばかりで「このブランドを選ぶことで、消費者が得られる具体的なメリット」が見えない場合も、伝わりにくくなります。
削ぎ落としの技術
ブランドメッセージをより伝わりやすくするためには、「削ぎ落とし」の技術が重要です。ここで、削ぎ落としには大きく分けて2つのアプローチがあります。
- 1. 仏像を削り出す型 〜本質を研ぎ澄ませる〜
- 一本の木の中に仏像を見出し、不要な部分を削り取るように、ブランドの核となる要素を残し、それ以外を削ぎ落とす方法です。
たとえば、Appleの「Think Different」。Appleは「クリエイティブな人々のためのブランド」という本質を持っています。そこで、「デザインが美しい」「操作が直感的」「革新的な技術」などの要素を説明せず、それらを包み込むシンプルな一言に落とし込みました。このように、不要な要素を取り除くことで、ブランドの核を明確に伝えることができます。 - 2. ブイヨンを抽出する型 〜多様な価値を凝縮する〜
- いくつもの食材からエッセンスを抽出してブイヨンを作るように、ブランドのさまざまな価値を統合し、エッセンスを凝縮する方法です。
ユニクロの「LifeWear」がその例です。ユニクロは「機能性」「価格」「デザイン」「サステナビリティ」など、多くの価値を提供しています。しかし、それらをすべて並べるのではなく、「LifeWear」というひと言に凝縮し、ブランドの本質をシンプルに伝えました。


削ぎ落としの実践方法
では、どのように削ぎ落としを行えばよいのでしょうか?以下のステップを試してみてください。
- 現状のブランドメッセージを書き出す。
- 不要な言葉を削ぎ落とせるか検討する(仏像型)。
- バラバラの要素を統合できるか考える(ブイヨン型)。
- 消費者目線で簡潔に伝わるかチェックする。
- 「ひっかかり」があるか確認する。(ぼやけた表現を避け、印象に残る言葉を選ぶ。)
- 「消費者にとってのベネフィットが明確か?」を確認する。
ブランドメッセージは、短くすることで力を持ちます。長々と説明するよりも、ひと言で「刺さる」表現を目指すことが重要です。
仏像を削り出すように本質を研ぎ澄ませるか、ブイヨンのように多様な要素を凝縮するか。どちらの手法を選ぶかはブランドの特性によりますが、いずれにせよ、余計なものを削ぎ落としたときにブランドの強さが際立つのです。