早期・希望退職する前にやることがある
配信日:2020年1月22日
いま「黒字リストラ」が拡大しているようですね。東京商工リサーチと日経新聞によると2019年に早期・希望退職を実施した上場企業35社のうち、最終損益が黒字だった企業が約60%だったとのこと。対象はミドル・シニア、その背景には「若手への給与の再配分」そして「デジタル・トランスフォーメーションへの投資」があります。企業にしてみたら若手人材の確保やデジタル時代に即した経営改革が課題ということでしょうが、リストラの対象となるミドル・シニアにとっては今後のキャリアや働き方を主体的に考えなければならないことを意味しています。
一方でリストラにかかわりなく、「早いうちに新しいキャリアに転じて長く働きたい」と考える人が増えている現実もあります。同時に中小企業では大企業で鍛えられた人材の採用ニーズも高い。だからこれからはもっと転職が一般化すると言えます。僕の経験では、転職というのは一種の賭けです。賭けなので、ひとによっては「ダメだった時にはまた転職」となりがちです。外資系ではそういう人が実に多く「ジョブホッパー」と呼ばれています。わずかな期間に2社も3社も転職しているひとがゴロゴロいる。いまでは日本企業でも珍しくないのではないかな。ジョブホッパーの世間的な評価は低く「こらえ性のないひと」という印象を持たれています。
問題なのは、転職者が転職先を決める時というのは、その会社が自分にぴったりでバラ色の未来に見えることです。しかし実際に入ってみると「知らされていなかった現実」を知らされることになります。どんな立派な会社でもそうだと思います。ある程度、我慢できることならともかく、そうじゃないと「こんなはずじゃなかった」となり、また転職を考える。人間にとって一番苦痛なのは「自分らしくないことを強いられる」ことなので、ジョブホッパーになるかどうかよりも、目の前の職場から逃げ出すことを考えるのが典型的なパターンです。
黒字リストラやセカンドキャリアを考える人が増えるにつれ、必然的にジョブホッパーの数も増えるでしょうね。ましてやそれまで大企業に勤めていて「転職は初めて」というミドル・シニアなら尚更です。おそらく一番得をするのは人材紹介会社です。ジョブホッパーが増えれば増えるほど、人材という商品の仕入れと、人材に去られた企業の人材ニーズが雪だるま式に膨らんでいくからです。人材会社は儲かっていいかもしれないけれど、こうなると転職者自身のワークキャリアとライフキャリアは、一体どうなるのか。それが中高年、バブル世代という社会のマスを占める世代で起こるとしたら、この国はどうなるのか?
すべての人材会社が儲けのことばかり考えているわけではないと思うけれど、転職者が幸せに次のキャリアを成功させられる提案や施策に、どれくらい取り組んでいるのかな。僕の友人にも人材会社でキャリアコンサルタントをしている仲間がいるから、一度聞いてみよう。職務経歴書を前にしてキャリアの棚卸くらいはどこの人材会社でも最初にやるけれど、それでどの程度、本人にあった転職先が見つけられるのか。おそらく本当に大事なのは転職者自身が自分の欲求と仕事での価値観をちゃんと知ることだと思う。「ちゃんと」というのは、人材コンサルタントの主観的な印象や感想ではなくコンサルタントと転職者本人が客観的に納得しあえるレベルで、システマティックに診断することです。自分の欲求や価値観がはっきりすると自分の意思決定に自信を持て、迷いがなくなります。そんなことを最初の面接でカウンセリングしてくれる人材会社なら期待できるかもしれない。転職の前に人材会社を吟味してみてください。
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