コロナとユニクロ・マスク

配信日:2020年7月1日

6月19日にユニクロからマスクが発売されて、あっという間に売り切れたと聞きました。エアリズムの素材を使った三層構造で特許も取るようです。それまでユニクロはマスクの参入には否定的だったといいます。しかし消費者からの圧倒的な要望があって参入を決めたとのこと。あらためてコロナでのマスク熱を確認すると同時に、おそらくユニクロがアベノマスクに代わる「国民マスク」になるのだろうと思いました。一方で市中ではマスクの供給も行き渡り、値崩れも起きています。コロナが始まってからわずか半年の間に、マスク市場は一気に成長、成熟し、いまや次の競争のステージに進みつつある。非常にスピードの速い変化を示した好例だと思います。

同じことはビデオ会議システムでも言えるでしょう。Zoomがそこでの注目株です。それまでZoomは一部の先進的な企業で使われていたサービスでしかなかったのですが、コロナで出張や対面商談、飲み会などがダメとなり一気に注目され、いまやビデオ会議の代表的なブランドです。その決め手になったのは、やはり使いやすさでしょう。なにより初めて使う相手にも参加してもらいやすく、しかもオンライン・セミナーやリモート・セッションに向く機能も必要最低限のものがしっかり用意されています。いまZoomの売上はどれくらいだろうか。6月1日の日経新聞によると、過去4カ月でZoom利用者は世界で3億人になっているとのこと。これは4ヵ月前の30倍の人数です。他のブランドも同様の勢いで成長しているとすれば、おそらくマスク同様に、この市場も急激に成長、成熟、次のステージの競争に向かうと思われます。

コロナ下では変化のスピードが速いことが特徴です。マスクにしてもビデオ会議にしても、「新しいプレイヤー」が現れた。それまでユニクロはマスクを否定的に考えていたが、そんなことにこだわるよりも新しい現実をすんなり受け入れたのです。これによって市場は更に別のルールを敷くことになります。ビデオ会議システムもしかり。逆にそれまでの価値観、ルールで商売をしていると、どんどん取り残されていくことになる。これが「変化に取り残される」ということでしょう。つまり、それまでの仕事やセルフ・イメージに固執することが一番のリスクではないかと考えています。おそらく戦後の日本でも同じだったのではないか。日清食品の安藤百福さんなんかは典型でしょう。新しい時代に相応しい、新しい商売を早く始めた企業なり個人が成功した。

「捨てる勇気」と言ってもよいかもしれない。コロナによって減った売上をどう回復させるかという過去からの延長線上に売上曲線を描く発想ではなく、「既に一回死んだ」つもりで新しい時代に適した商品や商売の仕方を始めるほうが良い結果に繋がるように感じています。もちろん、「それまでの商売や顧客はどうするのか」という問題は残りますが、それでもそのくらいのことを考えないと、状況はそれほど良くならないのではないかと思います。

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