緊急事態宣言と企業ブランド
配信日:2021年4月28日
今回の緊急事態宣言は「酒類の提供禁止」も入り、これまでよりも厳しいと思います。しかし、街の人々の反応は「白けている」という印象でしょうか、行政のメッセージ(お願い)が届いていないのではという意見もありますが、僕は届いていると思います。週末のニュースでは対象となる飲食店の経営者が出てきて休業補償の不足など怒りの声を上げていました。突然の発表で対応に追われるし、国、都知事や大阪府知事に言いたいことがあるのはよくわかります。しかし、これら自粛要請された業界は補償が出るだけまだ恵まれていると思います。事実、それ以外の業界も同じように大変ですが補償は出ません。飲食店に酒類を卸している業務用酒販店は突然の酒類提供禁止に頭を抱えていました。飲食関連だけでなく、広く見渡せば、ほとんどの人は直接的・間接的に困っていますが補償は出ない。そういう状況があることを、文句や怒りをいう飲食の経営者はどう思っているのか?
街の人たちがいうことを聞かないのは「宣言慣れ」もあるけれど、行政のやることに一貫性がなく信頼していないからだと思います。精神論のごとくオリンピックを強行開催する一方で、中学校の部活すら自粛せよという矛盾。会食は控えよという一方で、厚労省職員や多くの政治家が会食によってバッシングされる矛盾。Go toに代表される日和見的で場当たり的な施策。ワクチン接種も完了までの全体像がまったく見えない。戦略性や構想力のない政治家。この国は一体、どこに向かっているのか。そんな思いが人びとの政府や行政からのメッセージ(お願い)に「白ける」理由ではないでしょうか。
ただ、そのように政府が頼りないのであれば、こんな時こそ商人は「自分の頭で考える」ことが今まで以上に重要です。頼れない誰かを当てにするのは、それ自体が明白なリスクです。休業要請が出て、補償が少ないことをぶつぶつ言いながらそれに従うのは、結局、頼りない存在を頼っていることになる。一方、グローバル・ダイニングは東京都の要請にノーを言った。外食大手のブランドだけに世間では眉を顰めるひともいるでしょう。しかし「商人らしい」と思います。そもそも「誰かにこう言われたから従う」という生き方には違和感があります。なぜなら、誰かに従うのは一番ラクな生き方で、考える必要がない。考えるというのは実に大変で、ましてや世間に反対するような決定をするのは心情的にも難しい。だからグローバル・ダイニングは相当悩んで考えたと思います。ここに彼らの生き様を見ます。僕は「ブランドとは生き様」だと思っています。少なくとも「お上の言うことだから」と何も考えずに従って、補償が少ないと文句をいう生き様よりもずっと良いのではないでしょうか。
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