45歳定年制について
配信日:2021年9月29日
サントリーホールディングスの新浪剛史社長が「45歳定年制」を提唱して波紋を起こしました。「個人は会社に頼らない仕組みが必要」という問題提起でしたが「要はリストラではないか」という批判が起きたようですね。新浪社長のこれまでのキャリアで培われた価値観を考えれば、この問題提起はごく自然なもののように思います。それに、あまり言われていませんが、この4月から始まった「70歳まで再雇用延長の努力義務」へのアンチテーゼだったとも思います。企業の負担は言うまでもなく、それ以上に組織の老齢化による長期的なボディブロー、弊害も懸念されるでしょう。経営者としてはこちらのほうが問題だと思います。
もっともサントリーに勤めるような人たちにとっては45歳定年制でも問題ないかもしれない。世の中的なキャリアとして申し分のないブランドだし、45歳未満のなかには「そういうつもり」で働いている人もいるでしょう。逆にサントリーのような会社じゃない人には「冗談じゃない」となることも容易に想像できます。いや、サントリーのなかにもいるはずです。いまの時代は「放り出される」にはあまりにも分が悪い。大きな退職金をもらっても、その先が見えなければ一体、どうしろと言うのか。これはいまの日本が直面する課題だと思います。世の中ではジョブ型だの転職だの副業だのと言うけれど、正直、低い賃金でロクな仕事がないのが現実です。そしてそういう現実のなかで、日々の暮らしを立てている人がいることも事実です。よって、そんな甘言や成功者側の論理に踊らされず、自らの身の振り方を真剣に捉えるのであれば、会社に居残るのも立派な考えだと思います。
誤解を恐れず言えば、「個人は会社に頼らない仕組みが必要」というのは一つの価値観に過ぎないと思います。少なくとも「会社は」という主語を置くと、この文章は納得がいく。または「将来有望な私は」という主語でも同様。大事なのは自分にとってどうか。主語を「個人」から「自分」に置き換えた時に、本当にそれがうまく機能するかどうかを見据えることが大事だと思います。ひとによっては「会社に頼ることが必要」でも良いのです。あまりすんなりと一般論を受け入れず、同時に自己責任論に縛られないことが大事だと思います。
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