手作りの良さとは?
配信日:2022年8月24日
タイパ志向という言葉をご存知ですか?『いまの消費者が求める利便性とは、タイムパフォーマンス(タイパ)の効率化だ。人々はデジタル技術によって便利さと同時に、様々な情報や行動を取り入れることで忙しさも増した。そして新型コロナウイルス禍がタイパ志向を加速させる。象徴的なのは家事だ。おうち生活が増え、家事に費やす時間や労力も必要になった。いまや7割近い世帯が夫婦共働きで、以前のように手の込んだ家事に戻ることは難しい。これまで以上に家事時間も短縮を求めるニーズが強まったわけだ(日経新聞8月22日)』。ちょっと前までは「コロナ禍になりおうち時間を楽しむ人が増えた」として手作りパンが流行ったりしたと思ったら、いまやそれも下火になり短時間で調理できる調理器具や、「0秒食べ」が出来る食品がトレンドだと言います。手作りの良さを信じる僕としてはちょっと複雑な気分ではあります。
手作りとは一体、何か。料理に限らず色々な手作りがあります。例えば食器。作家の作った食器は風合いや手触りに手作り感があり、それ相応の値段がします。しかし僕は小さい頃から実家(窯業)で職人さんが手作りで生産する食器やタイル(その名も手彫りボーダーと言いました)を見ていて、一つの真実を知っています。それは「これらは手作りだけれど、大量生産品と変らない」ということ。何も職人さんや大量生産品が悪いとは思いません。しかし職人さんたちが出来る限り規格に合わせて手で作っているだけで、工場の生産ラインから生れた製品と本質は同じ。要は工業製品だったと言えます。
結局、手作りとは「手先で作るものではなく、こころで作るもの」なのだろうな、と思います。食器にしても家具にしても、身近なところでは家庭での手料理もそうだと思います。こころで作るから消費するひともそこに手作りの良さを感じ取る。つまり少々、味が濃かったり、盛り付けが崩れていても、そこに作り手が試行錯誤したり、悩んだり、楽しんだりした跡が見えるから手作りの風合いを機敏に感じる。そして自分に向けて作られたことに嬉しさを感じる。もちろん、上手ければそれに越したことはないけれど、正直、手作りを前にして上手いか下手かは関係ないと思います。むしろ中途半端に下手よりも、笑ってしまうほど下手ならユニークで味があっていいのでは。(はじめて生春巻きを自己流で作った時のことを思い出しました。あれはデカかった!)本来の手作りとは、こうした「生活感」や「作るドラマ」が価値ではないかな。そこに生活の質や豊かさを感じます。