ブランド投資をするに足るもの

配信日:2022年12月14日

週末に上野で開催されている岡本太郎展を観てきました。僕は、彼の作品はもとより岡本太郎さんの哲学や思想が大好きで「今日の芸術(オリジナルは1954年/光文社)」「自分の中に毒を持て(新装版:2017年/青春出版社)」などは何度読んでも新しい発見があります。「ブランド(の生き方)とはこういうものだろう」と何度も思います。詳しくは書きませんが、そこにあるのは自らへの挑戦、イノベーションでしょう。それが世間にはとてつもなく魅力的に見えるし、時には危険にも見える。「一体、どうしたらそのような生き方が出来るのだろう」「どうしたらそこまで自分に肉迫できるのだろう」と、わが身を省みてしまいます。

今回は岡本太郎さんの話を入り口に「ブランド投資をするに足るもの」の話をしましょう。スタート地点は「その製品サービスにイノベーションがあるかどうか」です。イノベーション、革新的なアイデアがあればブランディング投資は割りがあう。逆に凡庸なアイデアではブランドは立ち上がらないので投資をしても見合わないでしょう。ブランドとはイノベーションが服を着て歩いているようなものだとも言えます。しかしブランディングの道のりはここから始まります。あるブランドが生れると、直ぐにも他の製品がそのイノベーションを真似します。イノベーションの寿命は短いのです。さらに顧客はイノベーションを誰が起こしたかはあまり問題にしてくれません。イノベーションのオリジンよりも「実際に使ってどれほど便利か」が重要になるわけです。

事実、そのように模倣したブランドで「その後、トップブランド」になった例もたくさんありますね。例えば飛行機を発明したのはライト兄弟ですが、いまでは彼らの名前(ブランド)を見ることはありません。ボーイング(元々は木材関係の企業)などがブランドになっています。ここには市場浸透力という企業の「売るチカラ」が重要であって、要は「市場シェアの高さがブランドを作る」のです。現に差別化がほとんどされていないブランド同士でも、市場浸透力によって購買者の数が異なっていることは往々にして起きます。更に皮肉なのは「購買者が多いほど強いブランドと見なされる」傾向もあります。つまりブランディングとはイノベーションが入り口になるものの、次には市場浸透を続けなればならないプロセスだと言えます。

岡本太郎さんの話に戻ります。彼がすごいと思うのはずっと自らにイノベーションを続けてきたことと、パブリックアートにこだわったことでしょう。彼は収集家やお金持ちの家に飾られる目的の絵は描かなかった。そういう人たちには売らなかった。その代わりに「もっと一般のひとたちが芸術を楽しめるように」とパブリックアートにこだわった。時にはウイスキーの無料景品も手掛けました。スタッフは猛反対したけれど「一日の終わりにこのグラスでちょっといい気分になれたらいいじゃないか」と踏み切ったのです。これをブランディングでいえば「パブリックアートによって市場浸透を継続した」となります。彼はブランディングなど、これっぽっちも気にしていなかったと思うだけに、なるべくして名を遺したのだと思います。

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