グローバル経済での価格戦略
配信日:2022年10月5日
既に一部の方にはご連絡していますが、9月26日から10月28日まで「オンラインセッション」と題した個別相談会を実施しています。昨今の原料高によって、事業・ブランドの収益性に大きな影響が出ています。一方で、得意先との値上げ交渉は難航し、充分な結果が得られない状況もあります。オンラインセッションはそのような状況にある企業の方々を対象にした個別相談会です。相談会を通じて、対得意先、対競合など現状課題が明確になり打ち手の方向性が理解できるのみならず、値上げによって落ちる売上個数と、値上げによって上がる売上金額の予測を得られます。また戦術的に値上げ幅の妥当性、得意先との交渉方法も学べます。まだまだ受け付けていますのでご希望の方は連絡をください。
▼オンラインセッション ▼
https://www.bmwin.co.jp/onlinesession.html
いまの値上げは様々な業界がグローバル経済のなかで直面していることではありますが、かつては新興国による低価格化が悩みの種でした。その話をしましょう。どちらも収益性に関する話です。過去には「競争のグローバル化」によって低価格を余儀なくされる状況もありました。例えばスイス製時計などは典型でしょう。日本製時計によってスイス製はカテゴリーのコモディティー化に直面。そして日本製もまた中国製によって競争力を失っていきました。低賃金の新興国によって価格破壊が進むのは一種の法則です。その時、スイスの時計ブランドはどうしたか?実はシチズンなどのモジュールを買い取って安価な時計を作る一方、高額なものは「時計」を「宝飾品」としてリポジショニングし付加価値の高いビジネスに再構築したのです。つまりカテゴリー(正確にはフレーム・オブ・リファレンス)の再定義を行った。いま僕たちが目にする300万円以上するようなものはもはや時計ではなく宝石などと同様の宝飾品であり、富裕層を相手にしたブランド・ビジネスなのです。
別の事例。低賃金国への生産拠点のグローバル化も起こりました。何もかも安い労働力の国に生産をシフトするとなると、結局は新興国が有利です。典型なのは、それほど昔でもない中国。またはソ連崩壊後に台頭したルーマニアなど東欧やトルコでしょうか。欧州ブランドの多くはフランス製やイタリア製であることが購買の理由になっていることもあり、どうしても価格競争力では不利でした。しかしグローバル化のなかで立ち止まっていては脱落します。そこで欧州ブランドはルーマニアやトルコ、またはアジアで製品の大部分を生産するものの、それらを半製品として本国に輸入し「最終工程だけをイタリア国内で仕上げる」という戦略に出ました。これであれば最終製品の表記上はMade in Italyを名乗れる。それによって新興国のコスト感で作ったものがイタリア製の付加価値で売れるわけで、ブランド価値を落とさず高い利益率・額を可能にしたわけです。おそらく「職人が行う最終仕上げの工程やデザインなど付加価値の高い工程は国内に留める」ことが新興国の低価格に対抗する戦略です。ここを新興国に現地化すると簡単にマネされます。そしてイタリア製と同じ製品を低価格で売る。イタリア製というブランドの神通力にも限界が見え始め値段を下げざる得なくなる。これがコモディティー化のパターンです。欧州ブランドの多くはそれを良く知っているのでしょう。ここは日本企業も学ぶ点だと思います。Made in Japanのブランド価値を活かす。そのためにも高付加価値の工程は外国に出さないことが大事です。