今年は値上げの話題が多かった
配信日:2022年12月28日
今年は値上げに関する話題が多かったですね。「食品値上げ、巧者の秘訣、3割は増収両立。光る発信力(日経新聞12月11日)」には食品の消費が二極化していて、55%のカテゴリーは低価格へシフトしているものの、45%のカテゴリーで平均より高い価格帯の販売の割合が増えていると述べられています。しかも高価格帯シフトのうち61%(低価格シフトも含めた全体では28%)は増収を達成している。全体的に値上げへの抵抗感が強い中、このような結果を残せた企業は文字通り「値上げ巧者」と言えるでしょう。ここにはもちろんブランドの神通力もあるけれど、単純にブランド力だけが巧者の決め手ではない。それは今年、クライアントさんと取り組んできた僕の実感です。
実はブランド力以上に「値上げの方法」が大事だと学びました。特にブランド力が相対的に弱い下位ブランドは上位ブランドより重要です。どのように値上げをするべきか、同時にやってはならない値上げはどんなものか。顧客に対して損をさせるような値上げは絶対ダメだし、皮肉なのはそのような値上げは大して利益の改善にもつながらない。むしろ減収によるマイナス面のほうが大きい。総論でいうなら、やるべき値上げは「価値を打ち出す」ことです。しかし総論ではその通りだけれど「値上げという短期的取組みのなかでどうやって?」となると難しいことが多い。ましてやブランド力をベースに対策を考えると時間的なスパンが全く合わない。ここが知恵の絞りどころでした。そもそもブランド力が相対的に低い状況で且つ上位ブランドが値上げを躊躇するなかで、下位ブランドはどうしたらよいか。しかしそのような難しい状況でも解決策があることを学びました。これはクライアントさんにとっても今年の成果と言って良いのではないか。
この半年ほどクライアントの方々には度々申し上げていることですが、これから世の中の物価が上がっていく中で従来のような「安く売る」ことはもはや不可能になるでしょう。その意味では今年学んだ値上げ戦略は今後の資産・ノウハウになる。今後、安売りに代わる言葉は何かというと「コスパの良さ」だと言えます。いまさらのように思うけれど、この言葉こそ再認識するものでしょう。顧客が節約をするなかで「これはコスパが良い=価値がある」と言えるもの、またはそのようなバリューとプライスのバランス感を持ったものが売れていくでしょう。考えてみれば、節約とはコスパの良いものを優先的に買うことだとも言えます。コスパの良さの訴求。これが多くの会社、マーケターの来年の課題の一つでもあります。