コーポレイト・スローガンについて
配信日:2023年6月21日
コーポレイト・ブランディングでは「コーポレイト・スローガン」を作ることが多いものです。どのようなスローガンが好ましいかは企業の事情によって様々ですが「顧客や従業員との心理的つながり」を作り出せることは大事なポイントになるでしょう。有名なところではナイキのJust Do It。これは1988年にワイデン・ケネディ(広告代理店)が行ったキャンペーンが始まりで、文字通り顧客との心理的つながりを生み出すことに成功したことから、長年使用され続け、最終的にコーポレイト・スローガンにまで昇華しました。
このように「当初はそこまで考えていなかったけれど、会社のスローガンになってしまった」というパターンは時々あります。アップル社のThink Differentもそうですね。こちらはスティーブ・ジョブズがアップルに戻ったばかりの頃、アップルが最も苦しかった時期に行ったキャンペーンで、以来、アップルのファンにとっては自身の言わんとすることを代弁してくれているようなメッセージとして受け入れられてきました。その後、何年かキャンペーンは続き、いまや立派なスローガンになった。こういう実証済みのスローガンは「浸透させる」という半強制的なプロセスを必要としない分、企業にとっても顧客にとっても自然な存在で良いものですね。どんな企業にもナイキやアップルのように意外と過去のキャンペーンにこうした宝があるかもしれません。
コーポレイト・スローガンは顧客との心理的つながりを期待すると同時に「社内での価値観」を揃える意味合いもありますね。「水と生きるサントリー」のようなもので、顧客にとってはサントリーが水と生きようがどうしようが、あまり興味はない。しかし社内にとっては経営陣からの重要なメッセージになっていると思います。「飲料の美味しさを決めるのは水です。水にこだわって、水と生きてください。そういう製品開発をこころがけ、本当に美味しいものを世の中に提供してください」。こんなメッセージが含まれているようです。そしてそういう商品が世の中に出回り、顧客が「この製品、美味しいね」となると「そうです、なぜなら私たちは水と生きているからですよ」となる。ここで輪が循環するわけです。そのように考えると、まずは社内浸透が先行し、しかる後に社外へ浸み出すようなスローガンが好ましいかもしれません。