強者の手薄なセグメントにマトを絞れ

配信日:2023年8月9日

「自分がこのポジションにいるうちにビジネスを大きく伸ばしたい」「長年、置き去りにされてきた課題を解決したい」という想いで今の仕事に取り組む。こんなひとも多いでしょう。先日、ある外資系のCMOと食事をしていてそんなことを思いました。この方は最近この会社に転職し、早速、ビジネスが抱えている問題を話してくれました。業界事情を下敷きにして聞くと「昔から未解決のまま置き去りにされてきた問題」だと思いました。新CMOとしての挑戦はそれらを解決することです。

このような「困難に立ち向かう勇気と情熱」はCMOの資質として重要だと思います。僕の中にもこれと同じものが、昔からあると感じています。学校を卒業して最初に入社したのはAGFというインスタント・コーヒーの会社でした。当時、この市場ではネスレが70%、AGFが20%のシェアを持っていました。なぜネスレではなくAGFに入ったのか。「弱者の側に付くほうが面白い」と信じていたからです。事実、僕が新卒時に受けた会社は押しなべて弱者でした。しかし実際に仕事にあたると「面白い」などと気楽に言えるようなものではなく、事実、大変なことも多かったものです。「あまり賢い生き方ではないな」。経験してみて初めてわかること。苦笑してしまうほどの「生き方の学び」ではありました。しかし「ささやかな成功」の味、充実感や達成感はちょっと言葉にはできないくらいの快感がありました。よって弱者の側に付く生き方は、その後の転職時も変わりませんでした。「賢い生き方ではないかもしれないが、確かに生きている実感はある」。僕が欲しいのは、たぶんこの手のものでしょう。

同時にブランド戦略との出会いでもありました。ブランドマネージャーとしての最初の成功は、小さなブランド、プレミアムインスタントコーヒーでした。当時、売上高は4億円。社内では誰も見向きもしないものでした。しかし戦略のチカラによって売上は2年で30億円まで拡大。社内でも注目される存在になり成功をもたらしました。この経験が、僕の「情熱の確信」となりました。ある時、突然、天啓を得たようにブランド戦略のコツがズバッと降りてきたことがありました。四谷の地下鉄の駅を歩いている時でした。「チカラの差をなくしてしまうには強者の手薄な市場セグメントにマトを絞れ」。以来、弱者が強者に立ち向かう戦略は僕の実感として存在しています。(もちろん、これ以外にもいくつかあります。)

コンサルティングを始めて19年になりますが、僕は同じ情熱をもって支援先企業の方々と仕事をしています。一般的に大手企業では製品ラインは多岐にわたるので「大手企業であってもこの製品市場では弱者」のケースは実に多いものです。そんな時、僕の中では「思考が活発になる」のを感じます。支援先企業の方々が同じような情熱や渇望感を持っているなら尚更です。そしてそれまでの「流れ」を変える成功と成長を提供するのです。

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