昇り龍の傾向を示すブランド戦略の秘訣
配信日:2023年9月6日
僕たちのコンサルティングではコンサル開始から1年で「事業・ブランドがどのように成長したか」を年間移動平均(MAT)で検証するようにしています。この指標は「直近月の売上高を年度末とみなし過去12か月分を相加平均し毎月の推移をみる」ものです。要は毎月決算をしているのと同じで、ゆえに季節要因やキャンペーンの有無、特売の有無などの短期的・一時的要因を排除して事業の成長をそのまま見ることが出来ます。別な言葉ではプロダクト・ライフサイクル(PLC)を示すものです。S字曲線のどの状態にいるかを見ることが出来ます。つまり1年のレビューとしてのみならず10年に渡る検証も可能です。もちろん毎月この指標を見ながら成長を検証する支援先企業もあります。「今月も過去最高の売上高」。こんな状況は本当に嬉しいもので、つくづくコンサルティングを通じた支援をしていて幸せを感じる瞬間です。
これまでたくさんのプロダクト・ライフサイクルを見てきましたが、多くの製品が垂直立ち上げの後、すぐさま「への字」を描くのは、昔からの傾向です。実際のPLCは必ずしもS字曲線ではありません。導入から立ち上がらず「一文字」を描くことも多い。どちらも「出して終わり」のマーケティング。時には「エレファントカーブ」とでも言うようなものもあります。ずるずると売上が落ちているのに「気づかず野放し」の状態。一方、マーケティング投資を継続してきたブランドは「への字」と「Vの字」を繰り返し「昇り龍カーブ」のように波打ちながら売上が伸びているものもある。これらは文字通りロングラン・ブランドになっているもので、今後も更に伸びていく可能性が高いものです。要は「成功するブランドは更に成功し、そうでないブランド(製品)は短命に終わる」という二極化が見られます。(グラフはどちらも実際のプロダクト・ライフサイクル)
【エレファントカーブ】
右に向かって象が鼻を伸ばしているように見える。
【昇り龍カーブ】
波打ちながら売上が伸びているもの。
昇り龍のような傾向を示すブランドの秘訣は何か。先ほど「マーケティング投資」と書きましたがそれだけが理由ではありません。実際に僕もコンサルティングでは投資以前に「あること」を勧めています。それは「市場の力学」を使うことです。市場には独特な力学があって「均衡点」と呼べるものが存在しています。それを自らに有利なように「ずらす」「崩す」ことが成長の前提になければなりません。それを考えるのが「競争戦略」であって、マーケティング投資自体はそれを加速させることは出来ても、それだけで市場を動かすには途方もないカネがかかります。普通はこれを博打と言うでしょう。投資という名の博打です。そうではなく市場の力学を理解した戦略を組むことが、まずは大事になります。