ブランドは販売効率を良くする

配信日:2023年8月2日

今日はあらためて、ブランドの基本的なお話をしましょう。何のためにブランドを作るのか。それは「販売効率」を良くするためです。「なんだ、売ることか」と思うかもしれませんが、大事なポイントは「効率」です。製品を売る時にいろいろな売り方があります。例えば営業マンが得意先を訪問して製品の特長やメリットを説明して歩く売り方もあれば、ネット広告を出して売る方法もあります。どちらも「売る」という目標は変わりませんが、「売り方の効率」は「方法」によって違います。営業マンが一軒一軒、得意先を回って売るのは体力的にも時間的にも大変かもしれません。時には顧客から値下げを要求されるかもしれません。交渉も必要です。すると1日に売れる数も知れているかもしれません。ある意味、「効率の悪い売り方」かもしれません。

では「最も効率の良い売り方」とは何か。ここにブランドの効用があります。最も効率が良いのは、顧客がニーズを感じた時に「そうだあのブランドを買おう」と思い出してくれることです。例えば、今のような暑い時期に「ビールを飲みたいが家の買い置き在庫が切れた」となれば、僕の場合は「そうだ黒ラベルを買おう」とアマゾンの再購入ボタンをポチっとします。サッポロビールの営業マンは僕のところに来る必要もなければ値下げをする必要もありません。顧客(僕)のほうから「ひとつ下さい」という状況こそが最も販売効率の良い状態です。この状態を作るためにブランド構築をします。そもそも頭の中に存在しないブランドは「欲しい」と思うことができない。ここに「ブランド認知」の重要性があります。ブランド認知が高いかどうかは「思い出してもらいやすいかどうか」に通じます。競合ブランドとの競争は「思い出してもらいやすいかどうか」の競争でもあります。そのために広告やキャンペーンを行い、ブランド認知を短期間に高めることを狙います。ブランドが立ち上がる初期の課題と言えます。

ブランド認知が一通り出来上がると広告やキャンペーンなどは単なる刺激でしかなくなります。そこで長期的に大事なのはブランディング(branding)になります。広告やキャンペーンは一時的に盛り上がり消えていきますが、ブランディングは「蓄積」していくイメージです。最も有効なのは「顧客に何度も使ってもらい記憶に粘着すること」です。ちょっと専門的にいうと「ブランド体験を積んでもらう」ことです。あたかもブランドの体験談が書かれた紙が、ぺらり、ぺらりと顧客の脳内に蓄積されるイメージです。これがブランディングのリアルなイメージでしょう。ブランドとは「顧客の記憶」に構築されるのです。つまり、その体積量が多ければ多いほど顧客は思い出しやすく、やがて愛着が増し、最終的には「オンリーワンのブランド」になります。ブランドと顧客は、ちょうど友人知人などの人間関係にも似ています。僕たちが誰かと仲良くなるプロセスは、やはりその人と何度も会話や交流をして「良く知る」ことです。気心の知れた友人というのは「なじみのブランド」と同じです。こうなれば仮にブランドの機能性が他と似ていようといまいと、差別化されていようといまいと、顧客にとっては「このブランドがいい(オンリーワンのブランド)」という状態になります。よって何度も使って良さを理解してもらうことがブランディングの王道です。そのために時にはもっと使ってもらえるように既存客向けのキャンペーンも行います。また絶え間ない製品改良を行い、より良いブランド体験を積んでもらえるように頑張るわけです。その結果、そのブランドは顧客の「なじみ」になり、ニーズを感じた時に何度も何度も思い出してもらえるようになります。

【基礎から学ぶブランディングの実務】

コトラー教授の最新版「マーケティング・マネジメント原書16版」ではブランド、ブランディングは、もはやマーケティングの中心概念として扱われています。
ブランディングを学ぶのは、いまではマーケティングを学ぶのと同じくらいビジネスパーソン一般の基礎知識になっているかもしれません。
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