ブランドの「起きてからでは遅い問題」

配信日:2023年10月4日

ビッグモーターやジャニーズ事務所など、最近はブランドの毀損、または自損事故によって企業そのものが消滅の危機に立たされるニュースをよく見ます。どちらも身から出た錆で、このメルマガを読んで下さっている方々にはあまり関係のない話題だと思いますが、それでもブランド(企業)の存続という点では最悪の自損事故に他ならず、学ぶことも多いのではないでしょうか。強いブランドでも崩れる時は一瞬です。平時、ブランドが強力であることは当然有利に働くけれど、倫理を欠いた企業、顧客を考えていないブランドに批判が集まりやすくなっているのです。単なるブランド・イメージやバリュープロポジションだけではブランドの維持が難しいのが現状でしょう。

例えば、ビッグモーターに関連して損保ジャパンの問題。「白川氏は「事実関係としては『クロ』が推測される」と発言しながらも、有力な保険代理店でもある同社との関係維持のために取引再開を主張。その約20日後、損保ジャパンは3社の中で唯一、停止していた事故車の紹介業務を再び始めた。白川氏は今月8日の記者会見で「(取引再開は)顧客への思いが至らない軽率な考えだった」と謝罪した。当時の不正への認識については「広域に常態化していたということまでは認識していなかった」と釈明したが、サンプル調査の全案件で疑惑が確認されていただけに説得力には欠ける(日経新聞9月20日)」。結局、顧客や世間が見ているのは企業の本音・本質なのです。「悪い・間違っていると知りながらもお金になるからこっそり続けよう」というような小賢しい考えや利己的な考えがブランドを崩壊させる入口になる。

ここまで大きな話でなくても、日頃のマーケティング活動でも「もうこのブランドはいいや」という状況は溢れています。例えば、身近なところでは鬱陶しいリタゲ広告(リターゲティング広告)。ちょっとした興味関心からクリックしただけなのにしつこく広告を見せつけてくるブランド。「広告停止」を行ってもなぜか継続して表示されることが多い。これなどは顧客(私)を「ひと」ではなく「数字」、つまり「インプレッション数」「クリック率」「コンバージョン率」としてしか見ていない証拠でしょう。おそらく企業の担当者は業務の一環としてそうしている。しかしこちらはそういう「数字」としてみる企業の本音に腹が立つ。

このへんの話は、いまこそ、あらためてマーケティング部内で議論しても良いのではないでしょうか。かつては対岸の火事だったような話だと思いますが、いまの時代、「起こりうるリスク」と捉えてブランド担当者やマーケティング担当者は自覚しておいたほうがよいように思います。僕のところでもこのようなテーマで情報交換会を行います。ブランドに関して「起きてからでは遅い問題」とはこれらのことで、それは意識の欠如や「これが仕事だから」という事務処理志向の発想から起きるようです。

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