ブランド・カンパニーを目指す

配信日:2023年8月23日

ブランド・カンパニーを目指す。支援先企業の経営層の方々とよく話すテーマです。これは単なる売上利益と言った業績への好影響だけでなく「世間からの評判」という数値化し難いブランド資産を意味します。そういう意味では「ブランドとは評判である」という定義もまんざら悪くないかもしれません。そしてその評判は強力にビジネスを主導するものである一方、壊れやすい脆弱なものでもあるようです。経営者はそれを意識して評判を築き守る使命があります。

こんな話を思い出しました。昔、レミーマルタンというコニャックのマーケティング・マネージャーだった時のことです。フランス本社から当時のレミーマルタン家の子孫、ドミニク・エリアール・デュプレイユさんという14代目当主が来日して、僕たち日本のマーケティング・チームと食事をしながら話をしたことがあります。その時、僕は「何故、あなたほどの立場の人が自らこのようにビジネスをしているのですか」と、ついワインの酔いに任せて質問したことがあります。すると彼女はこう答えました。「レミーマルタンというブランドのためです。私たちにとってブランドこそすべてです。私は14代目当主として、このブランドを次の代に引き継いでいく使命があります」。その言葉にはキレイ事でない真剣さと「生き抜いてきた生々しさ」を感じました。「生き抜いてきた」というより「いままさに血を流しながらも生き抜いている」現在進行形のようでした。これが1724年から事業が続いている理由です。僕は話を聞いて酔いもさめ、むしろ感動した覚えです。「ブランドこそすべて」。以来、僕はブランド・コンサルタントとして仕事を通じて、日本にこの考えをもっと広めたいと思っています。

さてブランド・カンパニーですが、幾つかの特徴・条件があると思います。思いつくまま挙げてみましょう。最初に思いつくのは「強力な識別性がある」ことでしょう。ロゴやスローガン、カラーリングなどブランド要素は言うに及ばず、ブランドが生まれた背景や哲学を顧客に伝える「独自の価値観やブランド・ストーリー」も大きく寄与しています。もちろん「高い品質」という「実」の部分も識別性の一端を担うでしょう。それらが顧客を魅了しファン化する。つまり「顧客との心理的つながりが強い」「ファンが多い」のも特徴でしょうね。そして「イノベーションに積極的」というキーワードも浮かびます。現状に留まらない。主体的に変化を創造していくポジティブな自己否定でしょうか。またCSRや持続可能性など「社会的な価値と環境への配慮」も重要な条件でしょう。これらの要素は結局のところ「企業の生き様」に帰するかもしれません。確かに規模の大きな企業や社会的に認知されている企業はそれだけでブランドですが、規模の小さな企業でも「これはブランド・カンパニーに相応しいですね。将来、もっと発展しますね」と言える企業もたくさんあります。そういう点では「ブランドは生き様である(その生き様が評判を生む)」という定義も悪くないと思います。ブランド・カンパニーの生き様はもっと深く掘れそうです。

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