記録と成長
配信日:2022年1月5日
年末年始に古いパソコンに残っている書籍原稿を開きました。これまで9冊の本を出していますが、あらためて昔の原稿を眺めるのは初めてです。最初に書いた「ブランドマネージャー」という本は2000年の正月に書き始め、2002年に出版しましたから、ちょうど20年前のものになります。執筆当時、僕は32歳でした。「ブランディング」という言葉もまだ一般的でなく、ましてや「ブランドマネージャー」などという職業もほとんど認知されていない時代に「こんな面白い仕事があるんだよ」と世の中に伝えたくて書き始めたものです。同時に20世紀が終わるタイミングで「それまでのマーケティング業務を書き残しておきたい」という考えもありました。
当時の原稿(出版社の編集者が手を入れる前のオリジナル)は「懐かしい」と「恥ずかしい」が同居していて(笑)、なかなか読み進めることが出来ませんでした。「懐かしい」はともかく、この「恥ずかしい」の正体は何か。20年前の「若くて青い自分」がそこにいました。書いてある内容以上に、文体や言葉遣いにそれが出る。パソコン画面からでも伝わる筆跡と筆圧。それが「恥ずかしい」の正体です。いま、20年前の自分に言ってやりたいことは「この20年でお前の考えやモノの見方は大きく変わる」「しかしそれを知らない当時のお前は一生懸命これを書いたのだね」という感じでしょうか。確かに自分自身なのだけれど「子供に向き合うような気持ち」がありました。
こうやって昔の文章を読み返すのは照れ臭いけれど、確かに「当時の自分自身」を確認できたことは幸せでした。当時の自分をみることで「いまの自分」を知る。出発点を知ることで現在位置を知る。毎日の生活で「昨日と今日」の違いは確認しづらいけれど、20年前と今日の違いは確かに感じられるものです。そこに成長を見ることが出来る。または過去から現在へのプロセスを振り返る機会になる。文章に限らず真剣に向き合った作品やクリエイティブなど、なんらかの「記録」を残すのは、後々、自分の成長や立ち位置を確認する手立てとして役に立つのだと思います。