イーロン・マスク劇場
配信日:2022年5月18日
この2週間ほど、子供と「イーロン・マスク劇場(ツイッター買収の件)」についてLINEでやり取りしています。子供はこの4月から証券会社で働き始めたので良いケーススタディになるのと、この案件は株の売買を超えた戦略思考を学ぶ機会になると思うからです。「証券当局への開示ではなく、ツイートでこれほど多くの不確実性を作り出すというマスク氏の性格が、この取引全体をサーカスショーに変えてしまっている(テスラ株を担当する米ウェドブッシュ証券のダニエル・アイブス氏の発言。日経新聞5月14日)」。
マスク氏の行動を見ていると「陽動作戦による動的機会」を生み出すのが本当に上手いなと感心します。つまりツイッターで情報操作(陽動作戦)をしかけ、市場の「買ったら利益になる」「売ったら利益になる」を引き出し、結果、マスク氏本人が安く株を買う、短期的な目的を達成するという流れです。そのなかにはSEC(米国証券取引委員会)からの証券取引法違反の疑いや、そうかと思うとテスラ株の下落や上昇、ツイッターの偽アカウント問題なども差し込んで攪乱させる。いまのところマスク氏に有利に動いているように見えます。一見不利な状況や苦境に立たされても「それで終わりではない」。これはマーケティングでも人生でも言えることだと思います。
「動的機会」とは、そうした市場の動きの中にチャンスを見つけて瞬時に動く「達人レベルの戦略」だと言えます。その方法は手が込んでいて、相手(マーケティングでは競合)が「何故、そのようなことをするのか?」と「?」が頭に乗っかるような行動を取り、いわゆる「居着き」の状態になっている時に一気にことを運ぶわけです。まさに「?」を毎日のように作り出しながら生み出される機会を捉えているように見えます。
マスク氏の劇場はもう少し続くでしょう。ツイッターの件など単なる「キャンペーン」に過ぎず、本当はもっと大きな目的があるのかもしれない。正直なところ、僕もマスク氏の「真の目的」は見当がつきません。だからこそ戦略思考の勉強になるというものです。いくつかの事例を下敷きに想像してみるのも楽しいものです。