ブランドの持ち味・らしさ
配信日:2024年1月17日
今回はブランドについてあらためて述べましょう。ブランドは城壁に似ていると思います。競合と明確に差別化し、守りを固め、かつ城内にいる顧客(既存顧客)に安心して使い続けてもらうものです。強いブランドとは厚みのある高い壁に喩えられるでしょう。イメージされるのは顧客のマインドに独自性や特徴が際立っている状態。これが堂々とした、文字通り「際立った城壁」であればまずは安泰です。逆にもし城壁がなければ、またはちっぽけな壁なら、易々と競合に攻め込まれ、顧客を奪われる。どのような事業であってもブランドは意識されるべきものですし、壁の修理や強化は怠りなくされているのが好ましい。
壁を高くし城内を安泰に保つには「顧客との約束を守る」がコツだと思います。フォーカスを失わないという言い方でもよいかと思います。しかしこれが難しいところでもあります。例えば「安全をコンセプトにしているクルマが事故の危険性が高いスポーツカーを出さない」くらいの粒度であれば誰でも問題なく理解できるのですが、「ナイキが出すゴルフボール」レベルの粒度だとあまり考えずにやってしまうことが多いのではないでしょうか。ナイキとは「アスリートが身に着けるもの」です。これが顧客との暗黙の了解です。ゴルフボールは身に着けるものではない。「ポルシェが出すSUV」はどうでしょうか。ポルシェは裕福な独身者のスポーツカーです。SUVは家族向けのものです。これらは良かれと思ってやってしまうケースでしょうね。さらに顧客との約束はコンセプトに反するかどうかに限りません。2010年にあったギャップのロゴ変更はその典型でしょう。それまでのロゴとあまりにも違い過ぎて顧客の不評を買い直ぐに戻されました。
(左:1984年から現在まで使われているロゴ)
(右:2010年に導入され直ぐにひっこめられたロゴ)
つまり顧客との約束を守るとは「持ち味やらしさを損なわない」ということでもあります。ロゴでもパッケージデザインでも、時にはネーミングでも、あまりにも変え過ぎると城壁内の既存顧客は離れてしまうわけです。おそらくここがブランドを鉄壁にするうえでの一番難しいところだと思います。良かれと思ってやったことが裏目に出るケースです。ではそれを避けるにはどうするかというと「顧客の視点でみる」ことだと言えます。インサイド・アウトではなくアウトサイド・インの見方をする。要するにブランドとは顧客のマインドに存在している意味や持ち味そのものだということです。それに沿った製品や対象顧客なら城壁はより鉄壁なものになるでしょう。