市場導入戦略とアマゾン

配信日:2024年7月12日

今日は市場導入戦略について話しましょう。市場導入でよく見られるのが「垂直立ち上げ」と言われるものです。典型的なマスマーケティングの手法です。販売開始時期にマス広告を打ちながら製品の取扱いも一気に高め、導入早々に売上を最高潮に持っていくやり方です。よって生産体制もそれに見合うものにしておく必要があります。「市場は欲しがっているのに、欠品です」を避けなければなりません。需要予測と在庫管理が重要です。Eコマースが増えている時代でもこの手法はあり、最近の目新しい事例としてはキリンビールが久しぶりに出した新ブランド「晴れ風」などは記憶に新しいものでしょう。ただ最近ではEコマースの潮流に限らず、垂直立ち上げは減ってきているのではないかと思います。コストが掛かる上に短命に終わる新製品が多くなっていることが影響していると思います。あまり費用をかけずに新製品を上手に立ち上げたいのはどの会社も同じだと思います。

垂直立ち上げは一つの方法ですが、別のやり方(代替戦略)もあります。先日、キッコーマンがインドで醤油を売る話を日経新聞で読みました。文化のまったく違う国で醤油をどのように市場導入するか。これも興味深いテーマです。キーワードとしてあったのは「インド中華」。最近のインドの若者は時短の影響か、じっくり煮込むような料理よりも手早く食べられる中華が人気のようで、簡単に言うと、その現地化したものがインド中華です。しかも導入の方法は家庭用市場に直接アプローチするのではなく「まずは外食から攻めましょう」というもの。インド中華はまだまだ家庭で作るよりも外食で食べられるものらしく、「プロが使う調味料」というイメージで最初の認知を取るのが目的です。これなどはワインやスピリッツで行う市場導入戦略と同じ考えです。これら洋酒の業界では市場導入に一定の考えがあります。「まずバーやレストランなど外食で消費者に味わってもらい、その次に家庭に入っていく」という導入プロセスを取ります。外食店は仕入れをしてくれる顧客であるのみならず、消費者との最初のタッチポイント、または認知経路とみなし、ここでの露出やコミュニケーションの如何によって家庭での売れ行きも変わるわけです。このほかにも代替戦略はいくつかありますが、いずれも消費者の理解レベルや商材の性質によって市場導入の方法は変わるのがわかります。ただ垂直立ち上げにしてもそれ以外の方法でも、新製品が短命に終わる傾向は否めません。そこには「店頭」という前提条件があるからです。

最近の市場導入戦略ではアマゾンが非常に重要です。あまり説明の必要はないでしょう。アマゾンではそれまでの店頭を前提にした市場導入とは全く別のことが求められます。製品関連では検索キーワードの最適化や高画質の製品画像、それに「詳細な」製品説明が求められます。価格関連では通常の価格設定に加えて割引や価格プロモーションもコントロールします。更に広告関連ではアマゾン広告の他にSNSなどアマゾン外の広告も実施し製品の認知度を向上させるほうがよい。更にブランドによってはアマゾン内に専用の「ストア」も開設します。これらは従来のように組織的に一体感をもって取り組む全社的な活動はあまり必要なく、むしろ担当部署や担当者レベルでの市場導入になります。逆に言えば、マーケティングの4Pにかかわる「オペレーション業務」自体をすべて担当部署や担当者が行うことが市場導入戦略(?)になっています。そしていくつ星(評価)をもらえるか、ポジティブなレビューをもらえるか、それを見ながらクイックに変更を加えていく。なかなか大変な仕事です。しかし店頭の棚という概念を超えて、新製品の立ち上げからブランド育成までできる市場導入戦略だと言えます。

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