柔軟な新規事業戦略は「流れ」を掴む

配信日:2024年4月17日

新規事業の立ち上げを行っている部署でありながら「十分な成果が出ていない」と考えているビジネスパーソンは意外と多いのではないかと思います。ある調査によると「起業家が思い描いた当初の計画、新規事業の93%は不成功に終わる」というデータもありますから、100案件中1〜2件の成功だとしても仕方ないかもしれない。ただこれでは満足できないのが現実です。4月になって増えてきている問い合わせのいくつかにはこのような新規事業の相談が含まれています。なかには既に立派な製品ブランドを持っている企業もあり、「なぜ今回の新規事業では私どものような外部に協力依頼をされるのですか」と訊くと「計画通りの成果が出ておらず、一度、専門家の指導を受けてみたいと考えています」と言われたこともあります。

この会社の話というわけではありませんが、新規事業の成功・失敗は、導入後の「流れ」を掴むことが必要です。これを「創発的戦略」といいます。逆に当初、思い描く事業のカタチ、何らかの意図や思い込みをもって実施する戦略は「意図的戦略」といいます。しかし意図的戦略の93%は失敗するという結果があるのだから、実際の事業の流れを見て早期修正を加えていく柔軟性が求められます。これが創発的戦略です。日本のセブンイレブンがまだ生まれたばかり、イトーヨーカ堂にとって「新規事業」だった頃の話はよい事例でしょう。「米国のセブンイレブンでは置いていなかったが、日本のセブンイレブンは当初、肉や魚、野菜という生鮮3品のほか、菓子パンや食パン、牛乳、調味料、菓子類、シャンプー、歯磨き粉などを並べた完全なミニスーパーのようだった。今でいう社内スタートアップ企業であり、創業期はそんなものであろう。ここでビジネス訓となるのがコンセプトの明確化だ。便利さを売りにするコンビニを追求するうちに、調理する必要のある生鮮品は不要で、調理しなくていい食品を売るべきだとの結論に達した。例えば生鮮品の魚や野菜は不要で、ひと手間かかる刺し身やサラダは合格だ(日経新聞4月13日)」。これなどは当初の考えを、その後の流れにあわせ早々に修正していった事例だと言えますね。

僕が新規事業の案件で懸念するのは、こういう柔軟性を持った姿勢をどの程度とれるかです。あまりにも「こうあるべき」をやり過ぎると、たいてい失敗する。失敗率93%はいかに世の中に頑固者が多いかを示している数字のようにも思います。同時に計画通りに進むことがいかに稀かも示しているでしょう。そんなケースは長年、いろいろな会社が経験しているのではないか。強い意志をもって新規事業に取り組むのは結構ですが、時にはそれが足かせになることも知っておく必要があるでしょう。

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