今回の値上げは一時的なものか?

配信日:2022年7月20日

食品の値上げが消費者物価のレベルでも実感できるようになってきました。7月6日の日経新聞によるとスーパーでのパンや冷食など主要60品目の6割が1年半前と比べて値上がりしたと言います。一方で値上がり品目の半分は販売額が減ったとも出ていました。ここにはやはりブランド力の差が出たのでしょう。いくつかの食品カテゴリーのPOSを見ていると、トップブランドほど値上げしやすく販売量も維持、時には上昇の傾向があるようです。ブランドの重要性はいまさら強調することもありませんが、値上げの時ほどその価値を実感することもないのではないかと思います。

現在の値上げは企業物価のコストアップ、つまり諸々の世界情勢と円安による「一時的なもの」のように感じるかもしれませんが、僕はちょっと別の見方をしています。つまり今の世界情勢の不安定さが続き、そこに依って立つグローバル経済のなかで企業が生産を続けるのであれば、このような値上げまたは「不安定な供給」は今後もしばしば起きるだろうと思います。「値上げをどうするか」という目の前の問題は大事ではありますが、値上げをした後に「更なる値上げ」を強いられることも十分にある。円があれよあれよという間に139円までいったことを考えるとそのようなことは十分に想定されます。根本的なところでは「いまの状況が更に進むとして、原材料の安定供給をどうするか」という設問を立てるほうが現実的ではないか。値上げという短期的な問題に見えるものが、実は今後の「普通」になってはたまらない。逆に今回の物価高を糸口に、長期的な課題を解決するきっかけにすることを考えてみてはどうかと思うのです。

例えば原料調達のグローバル経済への依存度を下げる意味で、国内での穀物や生産物を原料にして現在の素材を代替することに真剣に取り組んではどうか。そういう意味では、代替肉や油、植物性ミルクなどフードテックは、いまの値上げ問題を皮切りに更に研究と導入が進むだろうと思います。これまでは環境問題や健康問題から取り組まれていたもの、そして多くの食品企業にとってはどこか雲をつかむような感覚だったテーマが「供給・コスト・値上げ」という現実的なテーマとして目の前にあるように思います。更に良いことに、それらを解決すると自ずと環境や健康の問題も解決されるかもしれません。まだまだ課題の多い分野だけれども、今回の物価上昇は将来の食の安定供給の背中を押しているようにも思います。

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