実践的な価格戦略を語る。

配信日:2024年7月26日

日経新聞で英バーバリーが苦境に立っていると読みました。「最大市場の中国で販売が鈍り、2024年4〜9月期は営業赤字に陥る懸念がある。高級感を志向しながらも値引きを続けたことでブランド力が落ち、消費者離れにつながった。欧米の消費も振るわず、約170年の歴史を持つ老舗は苦境に立たされている(日経新聞7月19日)」。中国での不動産市況による景気の低迷や物価上昇で消費者の購買力が落ちているのに加え「バーバリーのようにアウトレット店があるブランドは、正規価格で買うのがばかばかしい。アウトレットがないエルメスなどのほうが安心して買える(日経新聞7月19日)」ということです。バーバリーの事例は、高級ブランドの価値と価格訴求が相反する実態を示しています。

長期的な価格訴求がボディブローのようにブランド価値を下げていくことは今更言うまでもないでしょう。ビーエムウィンではこの20年、いくつもの業界でブランドの価格戦略を分析してきましたが、同様の結果を何度も見てきました。そして価格訴求が最終的にシェアに結び付かないことも数字として見てきました。そもそもバーバリーのようなラグジュアリーブランドに価格訴求は向かない。事実、同じ市場環境でもエルメスは上手くやっているようです。こちらはブランドイメージと価格戦略の一貫性を思い出させます。

価格戦略について語るなら「価格訴求が常套手段になっている業界」が相応しいでしょう。ここには実践的な値付けのノウハウがあります。今日はそんな話をしましょう。例えば食品やトイレタリーのような消費財ブランドが典型です。これらの業界では値引きは当たり前ですが「バーバリーのように値下げをしたからダメになりました」という例はあまりない。また単純な値下げもあまりない。価格戦略自体が巧妙になっていると言えます。例えばシャンプー。このカテゴリーでは「通常品」といわれるものが2種類ある。「ボトル」と「詰め替え」。さらにこの通常品2種類の他に「企画品」といわれるものがある。例えば「増量」「景品付き」「シャンプー+コンディショナーの抱き合わせ」「コラボ商品」など。そしてそれぞれに「通常価格」「特売価格」がつけられる。要は価格戦略とはいうものの、実態は「製品ミックス×販促ミックス×価格ミックス」の組み合わせで顧客に提示されるわけです。更には10以上のブランドが店頭にあり、それぞれが同じように価格を設定しています。

要は「複雑」なのです。その複雑さがブランドには幸いしている。シャンプーのみならず、消費財はラグジュアリーブランドと違い、日常的に使用され、価格が大きな購買決定要因であるため、ブランドが複雑さを駆使しているのです。これが消費財ブランドの強みであり、価値をあまり下げず、競争優位性を保つためのキーになっています。更に、これらの複合型価格戦略を売上との相関関係で分析してみると、これがまた興味深い。それらを精査した価格戦略はブランドにとっての「成功のレシピ(ウイニングレシピ)」と言えます。私たちの支援先の方々もとても喜んでくださいます。

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