売上の頭打ちは必ずしもブランドが原因ではない

配信日:2018年01月25日

企業がブランドの梃入れを考えるのは、売上に陰りが見えてきた時が多いものです。これまで順調に伸びてきた売上が徐々に横ばいになってきた。そこでカンフル剤的にブランドをリニューアルして、再度、勢いを取り戻そうと考えるのです。

この考えは昔からよくみられるものですし、全く間違ってはいません。しかし売上が横ばいになってきたのが、果たしてブランドが原因なのかどうかは検証しておく必要があるでしょう。

まず検証するべきなのは売りの現場です。営業活動はどうなっているか。流通環境が変わってきて得意先自体が苦しんでいるのに、営業マンは相変わらず同じ得意先ばかりに通っていないか。提案力や展開力で完全に競合に負けているなどということはないか。そもそも我々を大事にしてくれ頼ってくれる「真の得意先」と付き合っているか。そしてお互いに繁栄していけるような関係性で仕事を進めているか・・・。

「真の得意先」は大事なコンセプトで、これは必ずしも大きな売上の得意先とは限りません。そういう量的な評価も大事ですが「真の顧客」はもっと質的なもの。いまは小さいかもしれないけれど、今後、積極的に協力してお互いに成長できる可能性のある得意先でもあります。

コミュニケーションやプロモーションも売りの現場での大事な検証ポイントです。あるゴルフクラブのブランドをお手伝いした時のことです。売上が落ちてきているのでブランドをリニューアルしたいと連絡をもらいました。そこでリニューアルを前提にブランドの何が課題なのか、コンセプトまで見直す必要があるのか、イメージの改善が求められているのかを、最初に調査・分析しました。結論から言うと「ブランド自体には何の問題もない」ことが分かりました。消費者はブランドの価値をしっかり認識していて、イメージも良好だったのです。では何が問題だったのか?実際の売りの現場を検証しました。すると興味深いことが分かりました。通常、ゴルフクラブを買う時、消費者は試打(しだ)という試し打ち、またはフィッティングを行います。しかし店頭でのスタッフが減っている状況のなか、手間のかかる試打は敬遠されがちで、実際に回数が激減していたのです。試打もしないでクラブを買うことはありません。これが売上減少の理由でした。ブランド自体には手を付けず、その代わり試打の強化が必要でした。

「消費者のこころ」も大事な検証ポイントです。企業では、出したばかりのブランドを大した営業努力もしていないのに「売れないから」という理由で「コンセプトがだめなのではないか」とか「パッケージが・・」とか出たばかりの新製品に手を加えることもあります。しかしブランドのコンセプトを見直す前に「自分たちがこの新ブランドのために何をやってきたのか」をしっかりと見ることが大事でしょう。その新しいブランドも発売までは、ちゃんと考えて出てきたものに違いありません。「そもそも認知されているのか」「コンセプトは伝わっているのか」「ベネフィットは理解されているのか」「リピートはしてもらっているのか」・・・。ブランドや製品云々の前に、マーケティング全体の視点から検証することが大事です。売上というのはいくつもの要因が絡み合って、結果を生み出しているわけですから、まずは「なぜ売上が横ばいになってきたのか」を調べて、そのための打ち手を実施するのが正しいのです。意外と足元の活動にその原因はあるものです。

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