マーケティングはコミュニケーション・ビジネス
配信日:2018年11月21日
私はマーケティングというのはコミュニケーション・ビジネスだと思っています。このように考えると商品を作るのも広告を作るのも、デジタルでコンテンツを用意するのも営業マンが商談するのも、すべて同質のものとして腑に落ちます。コミュニケーションなので、相手(顧客)とのキャッチボールをうまくやることがマーケティングの真髄です。
例えばKY(空気読めない)という言葉がありますが、これはコミュニケーションの何かが足らないことを意味しています。マーケティングでは「顧客の言外の本音を察知するコミュニケーション」、つまりインサイトに問題があるとなるかもしれません。ちなみにKYの対義語は何か?思いつくのは忖度でしょうか。今年、この言葉をたくさん聞いたような気がします。忖度は本来、感度の高いコミュニケーションだと思います。事件のおかげでネガティブなイメージで浸透した感がありますが、マーケティングでは決して悪ではありません。
さて、マーケティングのコミュニケーションですが、上記一つ目以外にもいくつか挙げられるので、思いつくまま書き出してみます。二つ目は「相手の要望を傾聴し理解するコミュニケーション」。マーケット・インの基本はこれでしょう。傾聴と敢えて書いたのは、hear以上のlistenのレベルだからです。更にこれに関連して三つ目を挙げるなら「質問して顧客に喋らせる、顧客の要望を引き出すコミュニケーション」でしょう。これも「きく」です。「きく」は「きく」でもhear(聞く)、listen(聴く)以上にask(訊く)レベルのものです。訊くためにはその前提として自分のなかに仮説がなければならず、仮説構築力、コンセプチュアルに考えをまとめる力もマーケティング・コミュニケーションの一翼を担うものです。
そして四番目にあるのは「顧客に提案し行動を起こさせるコミュニケーション」です。商品開発での差別化ポイント明確化、広告クリエイティブ、商談でのクロージングが当たるかと思います。「顧客に影響力を及ぼすこと」と言ってよいでしょう。私の中で最もしっくりくるコミュニケーションの定義は実はこれで、おそらく実質的にこれがマーケティング・コミュニケーションの心臓部分です。またビジネスに限らず政治や宗教などでも最も重要なコミュニケーションだと思います。
最後にあるのは「顧客との良好な関係を維持・発展させるコミュニケーション」です。CRMの領域になります。同時にブランディングではディメンジョナライジング(多元化)の領域でしょう。ただ単に関係を維持するのみならず、顧客とブランドの「関係の鮮度」を保つよう、手を変え品を変え、ブランドの表現方法や見せ方、または意図的に意外性や驚きを与えて顧客を飽きさせない努力をすることです。それによって時には「このブランドらしくない」と言われることもあるかもしれませんが、そのようなチャレンジグで先進的な活動は長い目で見てブランド構築に寄与します。
このようにコミュニケーションを5つに整理してみると、実はビジネスのみならず、日常でも私たちが職場やプライベートで行っているものと同じものです。そういう点でマーケティングとは仕事のみならず人生にも応用できるものだと思います。