企業の存亡にかかわるような環境変化にどう対応するか?

配信日:2018年06月06日

環境の変化は、個々のビジネスどころか自社の存在すら無にしてしまうこともあります。環境変化とは概ね急激に起こるものではありません。徐々に兆しとして現れながら、やがて入れ替わっていくことを考えると、多くはあらかじめ予測可能な変化への対応を検討しなかった、または検討はしたが行動を起こさなかったことが原因です。平時から将来の変化に備えて予め社内で議論し対策を立てる、そして新しい行動を開始することが大事です。

富士フイルムはいまや写真ビジネスではなく医療・化粧品の会社として知られています。90年代後半からのデジタルカメラの普及が事業を根底から見直すきっかけでした。当時、消費者はデジタルカメラを使うようになり、写真フィルムもその現像も、もはや必要ではなくなりつつありました。恐怖そのものだったと思います。まるでトヨタが自動車を作れなくなるような大きな変化だったに違いありません。事実、2000年をピークに市場は毎年10%の勢いでなくなっていきました。

社内では事業の根本的な見直しが必要との声が高くなっていきました。そして、たくさんの議論がなされたくさんの離反者も出たようです。最終的に化粧品ビジネスに参入するとの方針が示されました。すると、こんな声もありました。「化粧品市場は既に先発の多くの企業が激しい競争を繰り返している厳しい市場である」。しかし経営者の意思は強固なものがありました。富士フイルムは写真フィルムに用いるコラーゲンの超微粒子技術を使い、「ナノレベルで肌の奥に浸透する化粧品」という新カテゴリーにフォーカスしました。アスタリフトという新ブランドは、まさに業界外からの革新的な化粧品として市場導入されたわけです。現在、売上は化粧品のみで1,000億円を超えています。いま思えば「ピンチはチャンス」だったのではないか。富士フイルムは写真ビジネスの危機を梃子に自らの事業ドメイン、コンセプトを書き替え成功した稀な大企業の事例だと言えます。

同じ環境下でコダックという写真業界の有名企業はどうなったか。たしかエクセレント・カンパニーという本に取り上げられていた会社ではなかったか。おそらくピンチをピンチと捉え、企業の資金力で他業界の優良企業とM&Aをすればなんとかなると考え、いつまでも昨日と同じことを続けようとした。なにより現状維持をよしとするマインドが環境変化に対応できなくなる原因です。そしてやがて時間切れになる。そういえば、昔、ある県の印刷業界の経営者たちに講演をしたことがあります。参加者の方々は一様に暗く口が重い。こちらもやりきれなく、それとなく聞くと「その週の初めに県内の大手印刷業者が倒産した」とのことでした。いよいよ変わらなければならない。いやもう手遅れかもしれない・・・。そんな思いが伝わってきました。彼らは変わっただろうかと今でも思い出すことがあります。

AIの進歩によって今後、なくなる仕事が多くなると言われています。しかしAIに限らず、世の中とはそのようにして進歩してきた歴史があります。イノベーションによってそれまでの仕事が不要になる。または変化を余儀なくされる。企業のみならず個人の仕事でも同じことです。私たちに出来ることは「自ら進化する」ことだけです。進化するかしないかの議論は存在せず、しなければ衰退するしかない。ブランドのリニューアルも同様です。環境変化にリニューアルを強要されるのではなく、自らの選択肢の一つとして、主体的に仕掛けブランドを進化させる努力が大切です。

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