ブランド・イメージという捉えどころのない概念をどう定義するか?
配信日:2018年03月28日
消費者はブランドをどのように認知し思い出すのでしょうか。例えば「今日のランチは何食べようか」と考えた時、「そうだあの店に行こう」と思い出してもらうにはどうしたら良いのでしょう。簡単に説明しましょう。ブランドが思い出される(想起される)のは2つのレベルがあります。一つはブランド要素(ネーミング、ロゴマーク、キャッチコピー、キャラクター、パッケージ、広告、製品、その他)に触れた時にブランドを思い出すレベルのもの。これをブランド再認と言います。もう一つは消費者がニーズを感じた時に、パッとブランドを想起してくれるレベルのもの。これをブランド再生といいます。この再認と再生の2つをまとめてブランド認知と言います。
ビジネスとしてより好ましいのは、ブランド再生です。なぜならこちらから売り込まなくても、顧客がニーズを感じた瞬間に問い合わせてくれる可能性が高いからです。売り手にしてみれば販売効率がとても良い。これがブランド戦略の目的です。記憶に粘着することで店に来る前にセリングを完了してしまうわけです。
そのように記憶に粘着するにはブランド要素の露出が大事なのですが、特に販売の観点からいうと、特定ニーズを感じた時にブランドを連想してもらいやすくすればよいのです。連想ゲームのごとく、「何々と言えば」に自分のブランド名をひっかければよい。そしてブランドがある程度、イメージの総体であることを考えると、大事になるのはブランド・イメージです。ブランド・マネージャーが独自のイメージにこだわり、その「とんがり」で記憶への刺さりを良くするはこのためです。思い出しやすくするのもビジネス上の効率論なのです。つまりコミュニケーションを始める前に狙うべきブランド・イメージをある程度描いてしまい、それに基づいてブランド要素を設計・露出すればよいのです。
ここで問題があります。イメージという捉えどころのないものをどのように描くかです。そのツールがポジショニングです。ポジショニングとは「どのようなイメージを持ってほしいか」を述べたものです(ポジショニング・マップはそれを2軸によって特徴的に示したもの)。具体的には「誰にとってのどのような価値を提供する何か」という簡潔な一文で表現されます。「誰にとっての」はターゲットとなる想定顧客でありイメージを植え付けたい相手でもあります。「どのような価値を提供する」は消費者ニーズを満たす武器であり差別化ポイントともいいます。最後の「何か」はカテゴリーですが、実際には消費者が購買の比較検討をする対象を言います。よって厳密にはフレーム・オブ・リファレンス(参照フレーム)という言い方をします。
そのようにポジショニングを簡潔な一文で書いた後、消費者ニーズに合致させる一言に圧縮します。つまり「何々と言えばこのブランド」の「何々」を決めるのです。例えば「水」のような差別化の難しいカテゴリーであろうと、「日常使いのミネラル・ウォーターと言えばサントリー天然水」「フランスの軟水といえばボルヴィック」「高級レストランで扱われている日本製ミネラル・ウォーターと言えばFuji」「高級イタリアンで出てくるミネラル・ウォーターと言えばパンナ」など。これらは差別化の難しい「水」カテゴリーの製品ですが、それぞれが独自の違いにこだわる嗜好品としてイメージでの差別化を基本戦略としているのがわかります。最終的に消費者が連想するものはニーズを満たす製品カテゴリーなので「そのカテゴリーを代表するブランド」として「イメージ」を定義するのです。これがイメージの正体であり最終形です。