ブランドに込めた想い
配信日:2018年09月12日
3年前に仕事をしたクライアントさんから、当時作ったコンセプトのシャンプーが送られてきました。ポストに郵便物と担当者のお名前を見た時に直感しました。「あの時のコンセプトがいよいよ商品化したのだ」と。
「ブランドに込めた想いはあの時からブレず、お客様からたくさんの共感を頂いています」「コンセプトが形になり感慨ひとしおです」。ご丁寧な手紙が添えられていて、私も嬉しくなりました。ここ数年のトレンドとして、女性の美容意識に訴える専門的で高機能なシャンプーが市場に出回りました。そして「私は私用の高いシャンプーを。子供(家族)は子供用(家族)のシャンプーを使う」が常識になりましたが、この新シャンプーは「お母さんと娘が一緒に使えるシャンプー」です。早速使ってみました。よい香りのする豊かな泡立ち。気持ち良い使用感。そしてドライヤー後の指通りの滑らかさが素晴らしいシャンプーでした。
(詳しくはこちら。http://www.ma-me-latte.jp/)
当時のセッションが思い出されました。あのセッションは、私もよく覚えていました。なぜなら担当者の2人の女性が、マーケターであり母親でもある(ターゲット消費者でもある)プロシューマーだったからです。最初のセッションではインサイトを行いました。そこでは消費者としての実体験にもとづく「子供と過ごしたお風呂場の思い出」がリアルに語られました。「一人のお風呂は作業のように短時間なのに子供と一緒だと会話の時間になる。仕事をしていてなかなか一緒にいてあげられないのを挽回する時間」「子供が背中を洗ってくれると嬉しい」「子供の語彙が増えていることにびっくりする時間」「子供はこちらをよく見ていると感心する時間」・・・。このような言葉から私たちはこのシャンプーを「子供と一緒に使え、時間を共にするシャンプー」にしました。
思えば、私も子供の頃に親と過ごしたお風呂タイムを鮮明に覚えています。身体の洗い方・手順を教えてもらったのは昨日のようです。驚いたことに、いまでもその時の手順で洗っています。しかし、たいていは洗ってもらうことが多かったものです。親の大きな、テキパキと洗う手は忘れられません。そんな両親も歳を取りました。当時は見上げるように大きかった身体も、いまでは随分小さくなったなあと、ちょっと寂しく思うこともあります。
子供の頃、風呂とは歯を磨くのと同じ「生活のルーティンであり作業」だったように思います。いまでも基本はそうです。しかしいまでは風呂の時間を楽しむことも覚えました。身体を洗う以上に、時には「くつろぐ」「ぼーっとする」など嗜好性の高い時間でもあります。温泉ならなおさらです。子供の頃、なぜ大人がそんなに温泉に行きたがるのか理解できませんでしたが、いまならわかります。温泉は日本人にとってリゾートそのもの。実際、アジアのビーチにいくか、ひなびた高級な温泉旅館にいくかは比較検討の余地があります。
風呂とはそのような嗜好性の高い、または子供や家族と密度の高いコミュニケーションをする場でもあるのです。この新シャンプーが提供する価値も、機能以上に「子供と思い出」という情緒的なものです。つまり「思い出作りのシャンプー」なのです。そんなものを世の中のお母さんたちにプレゼントしたいという想いが詰まっています。