ブランドとはもっとソフトで血の通ったもの
配信日:2018年11月07日
毎日、クライアントさんに伺ってセッションをしていますが、これが本当に楽しい。業界は日用雑貨から自動車まで様々で、それぞれの企業の問題や課題は決して簡単ではありません。しかし、それゆえに楽しい。そのような考える機会を頂けることに、こころから感謝しています。
やはりマーケティングやブランドというのはコミュニケーション・ビジネスですので、インサイト(顧客心理を洞察すること)をしている時は醍醐味を感じます。インサイトのなかでも「顧客はこのブランドをどう思っているか」「顧客が選び続ける理由は何か」は絶対に知っておきたいことです。ここがはっきりするとブランド・コンセプトが明快になり、その後に続く「ブランド要素」や「ブランド体験」で必要なことも芋づる式に見えてきます。つまりブランド・プランの全体を描きやすくなるのです。
例えば、顧客に次のような質問(アンケート)をしてみる。「数ある製品のなかから、私たちを選んでいただいた理由は何でしょうか」「実際にお使いいただいて、他の製品と違うと感じるところは何でしょうか」「お知り合いに私たちの製品を紹介するとしたら、何といって紹介しますか」等など。つまり顧客自身が客観的に答えられると感じる質問で、顧客のマインドのなかにあるブランド・ポジショニングをあぶりだすわけです。顧客はビジネス用語ではない、生の言葉でブランドを表現してくれます。それこそが消費者ワードで語られるブランドです。
例えば、美容室のような差別化が難しいブランド(店舗)でも「生活のリズムみたいなもの」「かっこよくしてくれる」「子供の頃、母親と一緒に来ていた」「相談しやすい」「アットホーム」「このひと(美容師)じゃなきゃダメ」「私のクセをうまくカバーしてくれる」「ヘッドスパが素晴らしい」「雰囲気がいい」「明るい」「老舗」「信頼できる」などの言葉が出てきます。このような言葉を俯瞰した時に(インサイトした時に)、その美容室らしいブランド・コンセプトが示されます。(ちなみにこの時は「人生を美しくする美容室」というコンセプトでした)
このようなセッションをクライアントさんと一緒に行うと、つくづく「ブランドとは企業が考えるよりも、もっとソフトで血の通ったもの」なのだと、あらためて気づかされます。そのような「半分生き物」を相手にしていることも仕事が楽しい理由です。だから目の前のブランドに人格と愛着を覚え、「この子をどうやって大成させようか」と考えずにはいられなくなります。この子の野望はなんだろうか。この子が世の中に出てやりたいこと、いままでにないぶっ飛んだことはなんだろうか。こんなふうに考えるのです。こんな話をクライアントさんと毎日のように出来るのですから、かなりおもしろいわけです。
最近の案件のトレンドは、誰もが良く知っているブランドほど「さらに一皮むけるには」で悩んでいて、そういう仕事が増えています。いわゆるブランド・イノベーションです。まさしく成功しているブランドがもっと成功するための戦略がイノベーションなのです。人間が成長するように、あるいは生物が気の遠くなるような時間をかけて進化してきたように、成功しているブランドほどイノベーションに積極的なのです。いまのところクライアントさんには喜んでもらえています。私にとっては、この子の野望をどう叶えるかのハードル、バーの高さがアップしたような感覚で、やはり楽しんでいます。