そこにインサイトはあるか?

配信日:2019年8月22日

よくインサイトの話をクライアントさんとします。インサイトとは、顧客が抱えている本音、欲求、不安、不満をみつけることです。例えば、日常の食生活が乱れがちなひと、またはどうしても脂っこいものや糖質のものを摂り過ぎてしまう傾向のあるひとは、薄々、「こんな食生活をしていて良いだろうか」という「不安」があるものです。そこに広告で「野菜、足りてる?」と言われると「そうそう、足りてないのよ」となり、思わず野菜や野菜ジュースに手が伸びるという仕組みです。この言葉にならない本音を言い当てられると、顧客は「そうそう」と共感し、思わず商品に手が伸びる、またはポチっとクリックしてしまうようです。

インサイトの面白さ(難しさ)は消費者自身も明確に言葉にならないことを「言葉として掘り起こす」ことかと思います。自分のことを省みるとよくわかるかと思います。例えば、僕はサントリー天然水(ミネラルウォーター)が好きですが、「なぜ好きなのか」というと、明確に言葉にすることが出来ませんでした。どのミネラルウォーターも味は変わらないし、値段も同じ。産地イメージやブランド・イメージも大して気にしない。それなのに毎回、これを買ってしまうのはなぜか?今回、それを真剣に内省してみました。すると、意外にも「自分のカラダとの親和性」を気にしていることがわかりました。「ひとの身体の70%は水で出来ている。だから日本人である僕は日本の水、それも水道水や水道水を浄化したブランドではなくて、日本の土壌から直接汲み上げられた天然水のブランドがいい」というのが僕の「言葉にならない本音」だと気づきました。だから外国のブランドや天然水でないと思われる国産ブランドは避け、このブランドを選び続けているのでした。

正直、サントリー天然水がそうかどうかは知りません(笑)。しかしそんなパーセプションがあり、これを選んでいます。消費者にとっては(僕もそうですが)、パーセプション(知覚)がすべてで、それを持ってして良し悪しを決めるのです。

企業でマーケティングを見ていると、このインサイトがはっきりしないまま、マーケティングを前に進めているケースが散見されます。たいていは企業側がビジネスモデルやスキームにこだわっていて、消費者や顧客の欲しいものや本音に立脚しないことが多いのです。要は「マネジメント視点」でのビジネスプランです。一方、顧客は私たちのマネジメント的な目的や思惑とはなんの関係もなしに動きます。ここにビジネスプランと実際の結果のギャップが生れるのです。

どのようなビジネスも顧客があってのビジネスですから、実はインサイトという概念は非常に重要です。僕はこれをAGF、最初の会社で学びました。そしてその後の会社でも、独立した後も、ここが本当に核心であると信じて仕事をしてきました。これは不変のマーケティング基礎であり、これからもそのようなことを伝えていきたいと思います。

ちなみに、インサイトでやってしまいがちな間違いは「インサイトを作り出してしまう」ことかと思います。要は顧客の側に存在しない欲求や不満を、売り手の勝手な解釈で「作り出してしまう」ことです。製品の機能性や特徴をベースにそれらは作り出される(妄想される)ことが多いものです。そういう製品はたいてい売れません。逆に「存在する本音や欲求」を突いた製品は顧客から「そうそう、よくわかっているね」と思われ、ポチっと購買のクリックをしてもらえます。つまり、インサイトは「言葉にならない本音や欲求を見つけ出す作業」の「見つけ出す」が大事なのです。同時に「見つけ出した本音や欲求」が本当に存在するのか、調査やヒアリングを通じて確認することも重要です。

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