商品リニューアルのコツとは?
配信日:2019年6月5日
先日、商品リニューアル戦略のセミナーをやりました。そして「リニューアルのベースになるのは顧客の思い出や、ブランドに抱いている世界観だ」と話しました。リニューアルをすることによって売上を伸ばしたいのだけれども、往々にして目新しさを出すこと(リニューアル感を出すこと)が目的になることがあります。つまり「思い出」「世界観」を踏襲しないリニューアルをしてしまい、既存顧客から「なんか別のブランドになってしまった」「私の好きなブランドじゃなくなった」と言われ離反されてしまうことがあります。
やはり大事なのは「顧客のマインド」を知ることです。何をどの程度、変更するかは顧客がブランドをどういうものとして捉えているかに依ります。考えてみれば、昔から売れているブランドほど、このルールに忠実なリニューアルを繰り返してきました。例えば食品のパッケージングで大事な容器のカタチだって、キッコーマンもヤクルトも、ペリエやタバスコ、コカ・コーラや、カップヌードルも、そのデザインも含めて大きく変えるようなことはしない。しかし全然古臭さを感じさせないものがあります。時代に乗り遅れないキャッチアップ、経年劣化を避ける程度の変化に留めているのです。パッケージングは顧客がブランドに抱く世界観を構成する大事な要素であり、それがなくなるとそれまで培ってきたブランド資産が損なわれ「なじみの客」が離反します。
時代が変わっても変わらず売れ続ける食品があります。タコさんウインナー、プッチンプリン、日清チキンラーメンやカップヌードル、きのこの山など。これらは明らかに子供の頃の思い出を梃子に大人をターゲットにした商品です。大人がこれらを買う理由は子供の頃の原体験です。昔、お弁当に入っていた赤いウインナー。風邪をひくと母親が買ってきてくれたプッチンプリン。受験勉強の夜食に食べたカップヌードル、修学旅行の新幹線のなかで食べたきのこの山。そんな思い出を買っている。だからどんなに飽食や美食の時代になろうと、これらはこれからも売れていくと思います。これが企業の食育・啓蒙、もしくは出来るだけ早い段階から顧客にブランドの原体験を積ませる目的です。
マーケターにしてみたらそれまでのイメージに囚われずに大きく変えて「新規顧客を取っていきたい」わけですが、いまのブランドと顧客のつながりを無視しては大事な足元の顧客を失ってしまう。これではリニューアルと称した新ブランドの導入と何ら変わりません。逆に顧客の「思い出」「世界観」を強化したリニューアルは成功しやすい。「そうそう、これがこのブランド」「よくわかっているね」と言われるようなリニューアルは不思議と新規顧客を集客する力も持っています。
年別バックナンバー
2019年 人気の記事
戦略と組織能力
2019年10月23日配信
It’s old 営業
2019年9月25日配信
こころの状態を知ること
2019年9月11日配信
勉強するということ
2019年9月4日配信
本当に「戦略らしい戦略」とは何か
2019年8月28日配信
そこにインサイトはあるか?
2019年8月22日配信
田舎街がインバウンド需要を取り込む戦略
2019年7月31日配信
仕事や人生で成功する人がこころがけていること
2019年7月24日配信
自分らしさを知る方法
2019年7月10日配信
商品リニューアルのコツとは?
2019年6月5日配信
スモールマスと大手ブランド
2019年5月29日配信
「このブランドでいい」か「このブランドがいい」か。
2019年4月24日配信
キャリアパスというものを考える機会でもありました
2019年3月20日配信
世の中の働き方はどんどん変わっていく
2019年3月13日配信
イノベーションとは前提条件を変えてしまうことでもある
2019年3月6日配信
ブランドとお客さんは似た者同士
2019年2月20日配信
プロ意識とは何か?
2019年2月13日配信
正月の目標だって、こうすれば達成できる
2019年2月6日配信
たった37%のひとしか70歳以降、働かないのか?
2019年1月30日配信
アップルとスマートフォン
2019年1月16日配信
新元号とネーミング
2019年1月9日配信