アップルとスマートフォン

配信日:2019年1月16日

アップルの業績が中国で減速していると新聞で読みました。ティム・クックCEOは中国経済の減速とそれに拍車をかける米中貿易摩擦の影響だと言っていましたが、新聞各社の見解としては新機種「X」の価格がファーウェイなどよりも高く買い替えが進まないのだとの見解のようです。

価格の問題はありますが、それなら価格を安くすれば買い替えは進むのか?実際、アップルは早々に価格を一部のチャネルに限り値下げしたようなので結果を見たいと思いますが、個人的な感覚としては「結果が良くなっても一時的な現象。短期的な効果があるのみ。長期的には現状に戻る」と思います。理由は「値下げ効果とはそういうもの」だからです。

「買い替えが進まない」がキーワードです。そのために「X」という高機能・高価格のものを出したのだけれど、消費者はそれに同調しなかった。なぜか?ここに再度、消費者インサイトをする必要があります。おそらく消費者は「そんなに新しい機能は必要ないよ。いまのままで十分だよ。ましてや価格が高いものなど必要ないよ」と言っているのではないかと思います。

つまりスマホというものが完全に生活に浸透し消費者のリテラシーも上がり、要はコモディティ化したのでしょう。ある意味、「イノベーションのジレンマ」にアップルは直面しているのかもしれない。イノベーションのジレンマとは、継続的なイノベーションを続ければ続けるほど機能がより専門化・高度化し、いつのまにか消費者がついていけなくなる、置き去りになることです。

ちょうどかつてのゲーム業界がそうでした。ゲーム機各社は開発競争のなかでマシンをどんどん専門化・高度化・高価格化させ、結果、いわゆる「オタク向け」のものになった。そうしたなかで出てきたのが任天堂Wiiでした。任天堂はマシンをローテクに戻し安価、そして誰でも楽しめる「体を使う」という新しい価値軸を提案。つまり「非ゲーム層」を狙ったマーケティングを行いました。これがバカ売れしたことはよく知られています。Wiiの戦略は「リバース・イノベーション」と言われるもので、イノベーションのジレンマに陥っている業界では有効なものです。いまのスマホ業界にも当てはまるのではないか。

同時にWiiを見ていて思うのは「競争のルールを変えるには、やはり土俵を変えることが大事」ということです。Wiiはいわゆるゲーム機の形をした「バーチャル・エクササイズ」という新カテゴリー(新しい土俵)を打ち出したわけで、ここに買い替えを促進するヒントを見ることができます。

考えてみれば、アップルは新しい土俵を打ち出し続けてきた会社だと思います。つまりコモディティ化したスマホ市場はそれとして、お家芸である「新しい土俵をつくる」ことも大事だと思います。

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