イノベーションとは前提条件を変えてしまうことでもある

配信日:2019年3月6日

最近、人手不足の話をよく聞きます。先日もある洗浄剤メーカーのクライアントさんで新製品コンセプトを検討していて、こんな声がありました。「衛生管理について厚労省の指導要領を介護や保育の業界のお客さんたちはちゃんとやっています。しかしその指導内容はとても厳しくて、現場はその通りにやろうとすると手間がかかって仕方ない。要するに人手不足のなかで疲弊しているのです」。こんな現場の悩み事を見ていると、洗浄剤も「効くか効かないか」という機能性を問題にするより「いかに少ない人手で効率的に洗浄できるか」が問われそうです。売れる商品の前提条件が変わってきているわけです。

先日の日経新聞でセブンイレブンが24時間営業を見直す実験を始める記事を見ましたが、Amazon Goのような「コンビニの無人化」は人手不足解消のひとつの答えです。いかにレジ前でお客さんを待たせないかを考えるのではなく、「レジでの会計」そのものをなくしてしまう発想。こちらのほうが根本療法といえます。もっともペッパー君のようなロボットをスタッフとして置いて対応させる手もあるでしょうが、結局、ペッパー君の管理やオペレーションはヒトがやるとしたら人手問題は再燃しそうです。このへんがAIの限界かもしれないし、大きな店舗でマスコットのように動いていたペッパー君が最近ではコンセントを抜かれてうなだれている理由かもしれません。

イノベーションというのは「いまの前提条件をがらりと変えてしまう」戦略ともいえます。例えばかつて馬車での移動が常識だった頃、自動車というのは「馬なしの馬車(Horseless-carrier)」と呼ばれていました。「馬」という前提をなくしてしまったことがイノベーションでした。同じようにいまでは「自動運転車」という言葉があります。これもAutomatic-carという言い方の他に「運転手なし自動車(Driverless-car)」という言い方もします。そのうちクルマが空を飛ぶようになると「道なし自動車(Roadless-car)」とでもいうのでしょうか。どうも「ナントカ・レス」の発想をするのがイノベーションを生むコツかもしれません。そして「ナントカ」の部分に来るのは、これまで絶対に外せないと思われていたキーワードなのでしょう。

面白いことに、ブランド・イノベーションの案件というとクライアントの担当窓口はブランド戦略部やマーケティング部ではなく、多くの場合がR&D、またはイノベーションを専門に扱う部門になります。本来、イノベーションはどこの部門にも必要と言われているしマーケ部門なら尚更ですが、実態としては時間的にも人手的にも「来年の新製品」「3か月後のプロモーション」という日常業務に優先順位が置かれることがほとんどです。そのような状況では雲をつかむようなイノベーションは余計な仕事に映っているのかもしれません。逆にR&Dやイノベーション部は日常業務としてこれをテーマにしているので何のストレスもありません。「ナントカ・レス」の発想も出来ますし、むしろそれが望まれます。

ただ注意したいのは「何かをなくすこと」を目的にすると、人々にとって意味のあるイノベーションにはならないかもしれないということです。目的はやはり「この先にどんな変化を生活の中に生み出そうか」を考えることで、そのあとに何をなくすかの発想をすることが大事です。つまりイノベーションとは将来のビジョンでもあるのです。

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